生活習慣病を予防し
健康寿命を延ばす
生活習慣病とは、過食や偏食などの食生活の乱れ、運動不足、タバコやアルコールの嗜好品の過剰摂取など日常の不摂生な生活習慣によって引き起こされる慢性疾患です。
生活習慣病の多くは、自覚症状がなかなか現れないという共通点があるため、健康診断などで生活習慣病のリスクを指摘されたり、検査結果に異常値が示されても自覚しにくく、予防や治療に踏み込めない人が多く見られます。症状が現われなくても、偏った生活習慣を続けていると、さらに体に悪影響を及ぼし心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血などの深刻な病気を引き起こすことがありますので、早めの改善が必要となります。
適切な治療と共に生活習慣を見直し、健康維持をサポートいたします。
糖尿病
糖尿病とは、体内のインスリンの分泌が不十分で、正常に使える機能が低下しているため、摂取した食物エネルギーを代謝できなくなり、高血糖状態が続いてしまう病気です。 糖尿病は大きく分けて、1型糖尿病と2型糖尿病に分けられ、それぞれ原因が異なります。
1型糖尿病
何らかの原因により、インスリンを産生するすい臓のβ細胞が破壊されることで、インスリンを作ることが出来なくなるため、高血糖状態になり発症する糖尿病です。このような場合、インスリンを注射しなければならないため、インスリン依存型糖尿病とも呼ばれており、若年層にも多く見られます。
2型糖尿病
最も一般的な糖尿病で、遺伝的な素因に加えて生活習慣の乱れが加わって発症します。高血糖が長期に渡って続くと、インスリンの分泌量が少なくなり、インスリン作用が低下して起こります。40歳以上の中高年以上の方の発症がほとんどですが、近年では若年層の発症もみられています。
上記以外にも妊娠糖尿病、その他の糖尿病(膵臓や肝臓の病気、または特定の薬剤が原因)があります。
いずれの場合も悪化すると動脈硬化が進行したり、心筋梗塞や脳梗塞の発症など、命にかかわることもあります。また、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの合併症を引き起こすケースもあり、日常生活や社会生活にも支障をきたすため、食事療法・運動療法による改善や適切な治療が大切です。
糖尿病の症状
- 喉が渇く
- 急激な体重の減少
- 目がかすむ
- 疲労感がある
- 感染症によくかかる
- 頻尿
- 切り傷などの皮膚の傷が治りにくい
- 手足の感覚が低下している など
その他気になる症状がございましたらご相談ください。
糖尿病は合併症が怖い
糖尿病は合併症を引き起こし、大きく分けて〝太い血管が傷ついて起こる病気〟と〝細い血管が傷ついて起こる病気〟があります。
主な「3大合併症」をご説明いたします。
糖尿病性網膜症
高血糖によって眼の網膜にある細い血管がむしばまれていく合併症です。進行すると症状が悪化し、失明に至ります。糖尿病性網膜症は自覚症状が無く、進行していくため、早期発見が大切です。
糖尿病腎症
糖尿病性腎症は持続する高血糖により発症し、腎臓にある細い血管がむしばれ、腎障害の進行とともに腎不全に至り、やがて透析治療が必要な状態になります。この病気も自覚症状が無いまま進行してしまうため、腎臓機能の定期的な検査が必要です。
糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、糖尿病の方に最も多くみられる合併症の一つです。 血糖値が高い状態が続くと、痛みやしびれを感じたり感覚がなくなるなどが起きることがあり、神経の代謝に異常が現われ、不必要な物質が溜まったり、血管が傷つき、血流が低下したりするなど、結果として神経の働きにも障害が起こる病気です。
その他の合併症
その他にもさまざまな合併症や併発症が多くみられ、動脈硬化性の病気や免疫機能が低下することにより、肺炎、結核、インフルエンザ、水虫、膀胱炎などの感染症にかかりやすくなったり、高血圧・骨粗鬆症・歯周病など、さまざまな合併がみられます。血糖値をしっかりとコントロールし、適切な予防や治療が大切です。
糖尿病の検査
具体的な検査としては、血液の検査によって血糖値とHbA1cの値から糖尿病かどうかの診断を行います。血糖値には、空腹時血糖値、75gブドウ糖負荷試験による血糖値・随時血糖値があり、それぞれの値から診断することができます。また、尿検査では尿中アルブミンを調べて糖尿病の合併症である腎機能の異常も確かめることができます。蛋白尿が出ていると、人工透析を行うリスクが高まりますので、早めに検査されることをおすすめします。
高い血糖値が悪い影響を及ぼす前に生活習慣の改善や治療をしたり、早期に発見することで血糖値をコントロールすることで合併症を防ぐことにも繋がるため、定期的な検査を受けることが重要です。
糖尿病の治療
糖尿病の治療もさまざまで、基本的な生活習慣の改善が必要であり、長く続けることが大切です。普段から血糖値のコントロールを心がけることが大切です。
食事療法
食事療法では、食事により、体に取り込まれた糖の量やエネルギーのバランスを調整します。糖尿病の改善には、栄養バランスの良い食事や規則正しい食生活を心がけることが大切です。高血圧や腎症などをお持ちの方は塩分やたんぱく質の量も考えていく必要がありますので医師や管理栄養士にご相談ください。 当院では管理栄養士による栄養相談を行っております。
運動療法
有酸素運動によって筋肉への血流が増えると、ブドウ糖が細胞内に取り込まれ、インスリンの効果が高まるため、血糖値は低下します。さらに筋肉が増えることでインスリンの効果が高まり、血糖値は下がりやすくなります。しかし運動をやめると効果は3日程度で失われていきますので日々の継続が大切です。
薬物療法(内服薬・注射)
食事療法と運動療法だけでは、血糖値のコントロールが難しい場合は薬物療法を併用します。
薬物療法には、内服薬とGLP-1製剤やインスリン注射薬あり、患者さんの状態に合わせて処方します。
内服薬
内服薬には、膵臓に働きかけインスリンを出しやすくする薬やインスリンを効きやすくする薬、糖の吸収をなだらかにして血糖値の急な上昇を抑える薬などがあり、患者さんの症状によって使い分けます。
GLP-1製剤
血糖値が高いときにインスリンの分泌を促し、血糖値を下げることができる製剤です。胃や腸内で食べ物の動きと消化の速さを遅くする作用や食欲を抑える効果もあります。負担が少ないお薬のため、低血糖の副作用が起こるリスクも少ないと言われています。
インスリン注射
インスリンそのものを補うことができる注射です。すい臓からインスリンを十分に出せない方、肝機能障害、腎臓障害を合併している方、妊娠中の方などはインスリンを補充する必要があります。
高血圧
高血圧は、血液が血管に強い圧力をかけている状態が続くことです。日本人の生活習慣病の中でも死亡に最も大きく影響すると言われています。 高血圧を放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などの命にかかわる病気へのリスクが高まります。発症してからもしばらくは無症状なことも多いため、発見が遅れることも少なくありません。
高血圧の症状
- 頭痛
- めまい
- 肩こり
- 足のむくみ
- 手足のしびれ、冷え
- 汗を大量にかく など
自覚症状が無いまま進行していくことも多いため、気になる症状がございましたら早めの検査をおすすめします。
高血圧の治療
基本的には患者さんの状態に合わせて食事療法・運動療法で治療します。それらを行っていても血圧の下がり具合に改善がみられない場合は、お薬での治療になります。 当院では管理栄養士による栄養相談を行っております。
脂質異常症
脂質異常症は、生活習慣病のひとつでLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などの血中の脂質が異常値を示す病気です。動物性脂肪や糖分、コレステロールを含む食品やアルコールを摂り過ぎたり、偏った食生活やストレス、睡眠・運動不足などが脂質異常症の発症の大きな原因です。自覚症状なく進行していくため、知らず知らずのうちに動脈硬化を引き起こしたり、放置していることで心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まる病気です。
脂質異常症の症状
自覚症状がないことがほとんどのため、無症状のうちに進行して少しずつ動脈硬化が進みます。食後の眠気や胸が痛くなる、歩くと足が痛くなるなどの症状は、動脈硬化が進行して可能性がありますので早めの受診が必要です。また、脂質異常症は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞・脳出血など、脳血管疾患を発症する最大の危険因子と言われていますので注意が必要です。
脂質異常症の治療
脂質異常症治療の基本的な治療法は、食事療法で脂質やカロリーの摂り過ぎに注意したり、運動療法によってカロリーを消費することで生活改善をします。普段の生活からコントロールすることでこれ以上動脈硬化を進行させないようにすることが大切です。また、患者さんの体の状態によっては薬物療法による治療も行う場合があります。 当院では管理栄養士による栄養相談を行っております。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧や高血糖、脂質代謝異常などの疾患が合わさることによって心臓病や脳卒中などになりやすい病気のことです。複数の生活習慣病を発症している状態なので、一般的な肥満とは違い、より動脈硬化がより進みやすくなります。
メタボリックシンドロームの症状
基本的には糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病に伴う症状がそれに当たりますが、無症状な方も多くみられます。腹囲が男性なら85㎝以上、女性は90㎝以上あることを必須条件とし、中性脂肪が150㎎/dL以上かHDLコレステロールが40㎎/dL未満、血圧が130/85mmHg以上、空腹時の血糖が110㎎/dL以上の3つのうち2つ以上がみられる場合は、メタボリックシンドロームと診断されます。
メタボリックシンドロームの治療
患者さんの体の状態に応じて、脂質や塩分の摂取量をコントロールしたり、腹八分目の食事、栄養バランスを考えるなどの食事療法や運動療法や肥満の解消にも取り組みながら生活習慣の改善をします。運動療法はインスリンの働きを良くしたり、血糖値の低下、基礎代謝の向上、血圧の低下、中性脂肪やコレステロール値の改善に効果があり、エネルギー消費量もアップするため、継続して行うことが大切です。 当院では管理栄養士による栄養相談を行っております。
痛風
血中の尿酸が結晶となって関節などに沈着することにより痛みが生じる病気で、主に足の関節に生じる痛みが特徴の生活習慣病です。治療をせずに放置することで痛みが強くなり、尿路結石などの合併症のリスクも高まります。さらに尿酸塩結晶が腎臓内に沈着すると、痛風腎となり腎不全の原因にもなることがあります。 初期の前兆として、足の違和感やむずむず感がある方は、すぐに治療を開始することで違和感は治まり、痛風発作を未然に防ぐことも可能です。
痛風の症状
- 関節などに激痛がある
- 赤く腫れている
- 熱を持っている
などの症状が多くみられます。
痛風の治療
すでに痛風による症状が起こっているときは、鎮痛薬を用いて痛みを和らげる治療を行います。その上で症状の原因となる高尿酸血症を改善するため、尿酸値を下げる薬を使用します。 さらに高血圧の合併症を防ぐために、塩分摂取量をコントロールする、アルコールを控える、尿酸を排出するために水分補給を意識するなどの食事療法も行います。 当院では管理栄養士による栄養相談を行っております。